演劇が終わった後、一同はこっそりと舞台裏に入っていった。日曜の昼の講演はこれで終わり、後は夕方に別の一座が講演するのみだ。先ほど、妖孤役をした女の子に会うという名目で、清香は5人を連れてホールの裏側へ入って行った。
「すげえな、姉貴。顔パスかよ」
「あたしもかなり手伝ってるからね。ほら、そこを曲がれば…」
がちゃーん!
「うっわ!」
廊下を曲がったところで、一同は足を止めた。控え室から、手鏡と壺が廊下に投げ出され、壁にぶちあたって割れた。清香がびくっと跳ねて足を止めた。
「何度も言っているだろう!私はこのままの生活でよいのだ!あなたの言うことには賛同できない!」
妖孤役の女の子の声が響く。
「てやんでぇ!うちの神社で巫女してくれってだけじゃねえか!あんな不良高校なんかやめちまえ!」
「断る!あなたも私が物珍しいだけなのだろう?この耳と尻尾がイメージに合うという、そんなつまらない理由で、私は巫女になどなるつもりはない!」
どうやら激しい言い合いが起こっているようだ。言い合いだけではなく、ケンカも起こっているようで、時折様々なものが外に放り投げられる。
「あの子、高校生だったんだ…」
アリサは、飛んできた時計を反射的に受け取って、目を丸くした。
「と、ともかく、今は経営難なんだよ!神主なんて仕事、儲からねえ!おめえがいれば、また…」
「やかましい!出て行け!」
どんっ!
一人の壮年男が外に蹴り出された。地球人の男は、ずり落ちた眼鏡を直して立ち上がる。
「もう2度と私の前に姿を見せないでくれ!とても不愉快だ!」
「おう、言われないでも出ていくわい!俺は諦めねえぞ!いつか後悔するぜ!」
男は捨てぜりふを吐くと、ドアを強く閉めた。
「はいよ、どいてくんな!」
廊下を歩いてきた男が、横を通り抜けた。まだむしゃくしゃするのか、転がっていた空き缶を蹴り飛ばすと、廊下を大股に去っていった。
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