強い日差しが白い砂を焼く。青い海が小さく波の音を立てる。木で出来たバンガローのハンモックに、美華子は水着姿でぶら下がっていた。携帯電話でブログを見ると、また新しいコメントがついている。いつの間にか、新しい記事を自分は投稿していたらしい。ミカベキナである自分が、自分とは思えないようなコメントを書いているのを見た美華子は、最近芸風を変えることにしたということを思い出した。
「お嬢様。こちら、ご注文のメロンプリティスペシャルでございます」
「ありがと」
 白い服を着た男が、ハンモック横のテーブルに、バカでかいボウルのような容器を置いていった。メロンのごろごろ入った、プリティという言葉の似つかわしくないパフェに、美華子が無造作にスプーンを突っ込む。
「美華子ちゃんの番ですよ〜」
 真優美が呼んでいる。この暑いのに、長袖のシャツを着ている。持っているのは、ビリヤードのキューだ。面倒くさくなった美華子は、ハンモックから下りてキューを受け取り、ビリヤード台に向かってひょいと突いた。白い玉がころころと転がり、他の玉を吹き飛ばした。
「お上手でございます。お嬢様」
「ありがと」
 先ほどの白い服の男が、丁寧に頭を下げる。いつの間に着替えたのか、真優美が水着姿ではしゃいでいる。バンガローの入り口付近には、異様に真四角なテーブルがあり、恵理香とアリサ、そして知らない男2人が座って麻雀をしていた。
「ミカベキナさん。きれいだなあ。俺、また惚れたかもしんない」
 聞き慣れた声に顔を上げると、竜馬が海パン姿で立っている。いい具合に日焼けをした彼は、男前に見える。美華子は、つい先週、挙式をしたことを思い出した。
「ありがと」
 美華子は立ち上がり、竜馬の頬にキスをする。空が赤くなっている。夕方か、明け方か…そんなこともどうでもいい。今はただ、この時間を大切にしたい。日時も、曜日も、今の美華子には関係ない。
「あー、もう。最近の若い人は…」
 古くさい世代の吐く台詞を言うアリサ。彼女の手には、絵の入っていない麻雀牌が握られている。あれも使うのだろうか。麻雀をやっている4人の向こう側では、車輪のついたボウリングのピンが、ボールから逃げ回っている。どうやら、新しい的当てゲームらしい。
 しかし幸せだ。暖かい日差しの中、時間を気にせず、好きな人と…
「ふふ、ふふ…」


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