「あれ?」
次の日の朝、学校に来た竜馬は、教室の入り口から中を見回した。見慣れたアリサの姿が見えない。アリサはいつも早くに学校に来ているのに、今日に限っては遅れているのだろうか。
「あ、竜馬君〜。おはようございます〜」
後ろから声をかけられ、竜馬は振り向いた。銀髪で肩までのパーマヘアー、大きい瞳、体毛は褐色の犬系獣人がそこにいた。隣には、ショートボブの茶髪で、金色の目をしたスレンダーな地球人少女が立っている。
獣人の彼女は真優美・マスリといい、アリサと同じように竜馬に思いを寄せている天然少女だ。だが、アリサのような強いアタックはしないので、いつも手を出せずにタイミングを逃してしまう。機械製作や大食いについては、ランクの高いスキルを持っている。
地球人の彼女は、名を松葉美華子と言う。素っ気ない態度で人と接し、空気の読めない行動を取る。射撃とギターのスキルは高いが、それが日常生活の上で何か役に立つかというとそうでもない。
「ああ、2人ともおはよう」
竜馬が教室に入り、道をあけた。
「アリサがいないね」
美華子もそのことに気づいたらしい。自分の机にカバンを置き、ぽつりとつぶやいた。
「うん、気になってるんだ。あいつ、風邪でも引いてんのかな。まあ、そうだとしたら、今日1日はのんびり過ごせそうだけどな」
竜馬がはははと笑った。
「そういえば昨日、アリサさんが言ってましたよぉ。3日ほど忙しいから休むって」
真優美が記憶の糸をたぐり寄せる。曰く、少し遠いところに用事があり、休むことになったそうだ。用事の内容も聞いていたはずなのだが、忘れてしまったと締めくくった。
「何の用事なんだろうな。今まで皆勤だって、えらく気張ってたのに」
カバンを置き、竜馬が自分のイスに座る。
「嫌に気にするね。いつもいなくなれとか言ってたのに」
カバンからサンドイッチを出し、かじる美華子。朝食代わりだろう。真優美が物欲しそうに美華子を見るので、美華子は半分に割ったサンドイッチを真優美に渡した。
「あ、いや。あいつがいるだけで、俺の心は安まる暇もないからさ」
美華子の視線に気づいた竜馬が、手を顔の前で振った。
「そうですよねえ。悪い人ではないけど、思いこみが激しいって言うか…自分の世界に酔ってるって言うか…」
真優美が苦笑いを見せる。普段いじられている彼女としては、アリサのおふざけはあまり好きになれない部分なのだろう。その他の部分では、一歩遅れている真優美をアリサが引っ張る形でサポートするなど、お姉さん気質の所は見せているが。
「そうそう、美華子ちゃん〜。新しい飛び道具を開発したから、それのテストに、昼休み付き合ってください〜」
「今度はどんなの?」
「吸盤付きのダーツガンのカスタムです。これなら人に当たっても痛くないし、物が壊れないから安心。学祭で射的するときなんかに…」
真優美と美華子が、新しい銃のことで話を始め、竜馬はその場を離れた。もうすぐ授業が始まる。
前へ 次へ
Novelへ戻る