2020年、地球は飽和していた。技術向上に、進歩に、飽和していた。人口は増え続け、世界はダメになる一方だった。
 そんな折り、彼らは現れた。彼らは地球の人間に言ったのだ。我々の仲間に入らないかと。
 そして2045年。地球は変わる。


 おーばー・ざ・ぺがさす
 第五話「決戦!機械研究部!」



「そんな…あまりにも勝手すぎます!」
 どんっ!
 眼鏡をかけ、痩せた体の人間少年が、目の前にある大きな机を叩いた。周りには、校旗、来客用のソファー、生徒達の取った数々の表彰状や黄金のカップが並んだ棚、校長室と書かれた小さな看板などがある。
「勝手かも知れないが、さすがに君たちにこれ以上の予算は出せんのだよ」
 革張りの豪華なイスに座った、小柄な男が、生徒の方を向くことなく答えた。この風格を見れば、この男が、私立天馬高等学校の校長であることは明らかだ。彼の目の先には窓があった。放課30分前の校庭には雨が降り始め、グラウンドの土を湿らせている。
「我々が大学レベル、いや、大学院レベルのロボット工学技術を持ってるのは先生も知ってるはずだ!あと10万、いや、あと5万円あれば…」
「くどいな、君も。我が学校には、君たちの機械研究部以外にも、金を食う部活動はたくさんあるのだよ」
 少年の言葉を校長が遮る。
「知っているかね?君たちには年間、50万もの予算を渡しているのだ。これは、部活動費全体の、優に40パーセントを占めている。また、君たちは校内外で様々な問題を引き起こしている。野球部やバスケットボール部など、まじめにやっている運動部の生徒から、苦情が来ているのだよ。見たまえ」
 校長は机の引き出しから、一部の冊子を取り出した。冊子の表紙に書かれていた言葉は、少年の怒りを誘発するのに、十分な威力を持っていた。
「な…機械研究部の横暴を許すな、だって?僕らのやっていることが、どれだけ有用なことか、愚民共にはわからないのか!」
 ばんっ!
 冊子を床に投げつける少年。その顔は怒りで歪んでいる。
「同じ生徒だ。愚民などという言葉を使うものではない。君たちは少々、調子に乗りすぎているようだ。その冊子の最後のページを見なさい」
 校長に言われるままに、少年は冊子を開く。最後のページには、機械研究部の活動を停止する旨と、それを承認する校長のサインがあった。
「校長!」
「話は以上だ。出ていきたまえ。私も忙しい」
 校長の後ろ姿に、少年はこれ以上何を言っても無駄だと悟った。ドアを開けて外に出て、乱暴に閉める。外には、他の機械研究部のメンバー2人が、心配そうな顔つきで立っていた。
「どうだった、部長?予算、もらえたか?」
 1人が、言っても無駄だろうという顔で聞く。少年は首を横に振った。冊子の最後のページを見せると、2人の顔色が変わった。
「休部だなんて!しかも無期限!そんな…」
 絶望の顔色を見せる2人を見ながら、少年は冷たい怒りを心の中で燃やしていた。
「仕方ない。あれ、するぞ」
「ま、マジかよ。停学じゃ済まないことに…」
「大丈夫。俺の独断だから、お前らは何も聞いていないし、何も見ていない」
 彼の脳裏に、自分たちの最高傑作の姿が、一瞬よぎる。それを使えば、何も知らない他の生徒に、復讐する事が出来るだろう。
 今に見ていろ。今に…


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