召還術ってありますよね。RPGによく出てくる強力な術。呪文を唱え、召還獣なる幻想生物を呼びだし、使途するスキルのことです。前からこの召還術に対して疑問を持っていたので、この際に書いてしまおうと思います。召還する側はいつでも呼び出して戦わせたりしてますが、召還される側っていうのはどうなってるんでしょうかね。
 まずは召還獣というものを考えることから始めてみましょう。召還獣は人間外の生物の場合が多く、ドラゴンだったり精霊だったりします。また、意志を持って人間と会話したりすることもままあります。RPGでは、彼らを呼び出すために、力を認めてもらうための戦いをすることもあります。これらのことから、彼らが召還師の作り出す幻影などではなく、生物であると思われます。
 次に、召還する手順を考えて見ましょう。現実世界で人を「召還」するためには、メールなり電話なりのろしなりでその人物に「来て欲しい」という旨を伝え、その人物がそれを受け取り、自分の都合や時間と照らし合わせ、承諾の意図を伝え、徒歩なり自動車なり自転車なりで召還した人物のところへ行く、という、おおよそ召還らしからぬ手順が必要となります。召還獣を呼び出す場合も同じようなプロトコルを使うとなると、以下のようになるのではないでしょうか。

 1/呪文を詠唱し、召還獣側に「来てください」とお願いする。
 2/召還獣側が召還師に対して、了解の返答をする。
 3/呼び出す。

 このプロトコルの中で、呼び出すという作業は、召還獣の立場によって、2通りの考え方があります。もし召還獣の立場が上で、「来ていただく」という考え方ならば、召還獣が出現するときの魔力は召還師持ちになるはずです。召還獣を呼び出すときに精神力を大量に消費するということのつじつまもあいます。ただ、召還獣の気まぐれや都合で、来ないことがあってもおかしくないはずです。
 逆に、召還獣の立場が下で「呼び出してやる」という場合、召還獣自体が出現するときの魔力を出すことになるでしょう。この場合、召還師の方が立場が上なのですから、「呼び出したのに来ない」という状況が起こらない理由にもなります。
 そもそも、平時に彼らがどこに存在しているか。ポピュラーな数作品では、召還獣の住む世界があり、そこで契約した召還獣を呼び出すという設定でした。ただ、もしどこかに住んでいる召還獣を呼び出すという話ならば、呼び出される方の都合もありますよね。飯食ってたり風呂入ってたりするときに「来い!」なんて命令しても、来られるはずがないです。
 先ほどの「召還師優位説」を使用して、いつでも大丈夫、としても、とっさに出られないこともあるでしょう。例えば雄と雌でナニをアレしちゃってるときなど、最たる例です。ボス戦だからと頻繁に呼び出されたら、たまったもんじゃない。逝く前に行く。「私よりあんな召還師の方がいいのね!悔しい!」とか「俺じゃなくて召還師に抱いてもらえばいいだろ!」とか言って、喧嘩が始まって、毛を毟られて鱗を剥がされて、簀巻きにされて塔の窓からぶら下げられて、別れることになったりしたら、召還師が慰謝料を払うことになってしまうかも知れません。賠償金100万払えなんて言われたら、旅すら出来ません。恐ろしい。武器防具を買うために貯めたお金が、不用意な召還のせいで慰謝料になってしまうのです。おちおち詠唱も出来ません。

 ここまではファンタジーの世界。つまり、魔法がありましたが、魔法オンリーで召還するわけではないゲームや、召還される側の時間の概念が消えるゲームも存在します。
 女神転生などだと、召還される側の悪魔はデータとしてコンピュータ内に入るという設定です。つまり、圧縮したファイルを解凍するような形で悪魔を呼び出せると考えられます。そうすると、召還される悪魔側はただのデータになるわけですから、時間の概念もなくなり、都合のいいときだけ召還できるようになる。
 ただ、こう考えると、悪魔に人権もへったくれもあったもんじゃないです。悪魔使いの都合で、圧縮したり、解凍したり、圧縮したり、解凍したり。すさまじいです。仲魔(このゲームではこう表記する)というより、既に物扱いです。
 悪魔と結婚した悪魔使いが、夫婦喧嘩のたびに圧縮解凍なんてことをしないとも限りません。恐ろしいドメスティックバイオレンスです。隔離です。ネコマタやリリムなどの、かわいらしい悪魔をお嫁にしようと考えている悪魔使いの方がもしおられたら、彼女たちにこんなひどい仕打ちをするのだけはやめてください。後生ですから。
 また、召還プログラムが破損して、尻尾とか羽だけ圧縮し忘れたとかいうことになったら、さらに恐怖です。もし召還中に「このプログラムは不正な処理をしたので強制終了いたします」なんてメッセージが出た日には、どうなることでしょう。楽しく旅をするはずの仲魔が、さらなるグロテスク化。「お前、尻尾が…」「え?アッー!」というやりとり。もう戦闘どころではありません。プログラマーの責任重大ですね。

 これらの考察を総合するに、「召還術は召還獣の都合が大きく関わる術である」ということと「大抵の場合においてそれについての設定がない」ということがわかりました。各ゲームの世界が、これらをどう解決しているのかの考察は、次回に回すことで。

 (記載日:2007/5/21)

Textへ戻る