みなさんは「コウノトリコンプレックス」という言葉をご存じでしょうか。え、ご存じない、と。そりゃそうでしょう。これは今、私が適当に作った言葉ですもの。この言葉を作ったのは、ある問題を考察するのに、ふさわしい言葉が見つからなかったからです。その問題というのは、「赤ちゃんはコウノトリが運んでくるというのが定説であるが、コウノトリ自身の赤ちゃんは誰が運んでくるのか」という問題です。
正直に申しますと、私はコウノトリの赤ちゃんもコウノトリが運んでくるものだと考えております。なぜなら、彼らは赤子を運ぶために選ばれたプロ集団であり、他の動物が赤子を運ぶことなど到底不可能であると考えるからです。考えてもみてください。コウノトリの赤ちゃんに限り、タカアシガニが運ぶようなことになってしまったら、世界中の赤子運送の法則が乱れます。コウノトリの赤ちゃんも、コウノトリが運ぶという考えは、至極自然に浮かぶものだと言ってよいかと考えます。
しかし、ここで1つの疑問が浮かびます。それは、コウノトリ赤子運送省に勤める役員の子供に対しての疑問です。赤子運送省という名前は仮の物ですから、もしかすると別の名前があるかも知れませんが、ともかく「赤子を運送するのは民間の運営会社ではなく国家機関である」という前提があります。考えてもみれば、赤子を運送するという仕事は我々消費者(でいいのかわからんが)がお金を払って受けるサービスではありません。どこかしら、他のところからのお金で、彼らに賃金が支払われておるはずです。これはきっと、税金の一部を赤子運送省にて使うことにより、そこから職員や役人の給与が出ているのではないかと考えられます。で、その赤子運送省の職員の子供が、どうなっているかというのが問題です。
もし彼らが公正公明な組織であるならば、何かしらのルールに則って、どの家庭にはどの赤子を届けるかという区分をはっきりさせ、仕事をきっちりとこなしていることでしょう。自分の子供だからとひいきしないのが、正しい在り方のはずです。しかし、です。もし、職権を乱用し、自分のところに聡明で未来性のある子供が来るように仕組んでいるコウノトリがいるとしたら?それは大きな問題です。汚職と言っていいかも知れません。
そうなると、赤子運送省の評判はがた落ちです。最近はインターネットで噂もあっという間に流れるという話ですから、もしそんな噂が欠片でも流れたら、火消しに必死になることでしょう。省のトップは汗をかきながら、「我々はそのようなことは行っておりません。そのような不正を見つけ次第、法と正義の元に、しかるべき対処を…」なんて言いやがるわけです。
ところがですね、やはり悪いやつというのはいるわけで、本当にそんなことをしているやつがいる。とあるコウノトリの家に、がさ入れが入るわけです。で、そのコウノトリが職権を乱用している証拠が、段ボールに詰められてコウノトリ警察によって運び出されます。齢6歳になる、かわいらしくて目のぱっちりした娘さんが「お父さん…」なんて、涙目になりながら連れていかれるわけです。当然です、彼女は重要参考人であり、証拠人であるわけですから。コウノトリ父は更迭され、母は離婚、未来があるはずだった子は施設にて暮らすことに。自分の子供に対して、手心を加えただけで、1つの家庭はバラバラになり、未来ある美しくも聡明なコウノトリの女子はその芽を摘まれてしまうわけであります。あなおそろしや。
つまり、このコウノトリコンプレックスというのは、現代社会における子作りの暗部と汚職を、如実に表している恐ろしい言葉なわけです。皆様、くれぐれも、子供を授かるときには気を付けてください。コウノトリと結託し、自分の所にだけ良い子供が来るようになんて考えた末には、絶対に良い結果は訪れないのですから…。
(記載日:2010/12/14)
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