「こんなこともあろうかと!」という台詞を、聞いたことはありますか?この台詞は、漫画などでよく使用されるステレオタイプな台詞の一つで、主に「有事に備えて用意しておいた何かが、実際に起きた事件にて役に立つとき」に使われる台詞です。チームの頭脳役などが、こんなこともあろうかと!と取り出すものは、大抵役に立つ素晴らしい発明品です。お前、本当にこういうことがあると思って作ったのか?と疑いたくなるようなものもありますが、用意周到さの現れとして、この台詞があると言ってもいいでしょう。
 私はこの「こんなこともあろうかと!」という台詞がとても好きです。ギャグ的な意味でもとても好きですが、実生活においてもこれを口癖にしたいと思うほどに好きです。先を見通す能力や、それに備えて合致するようなアイテムを用意する能力が無ければ、この台詞を口に出すことはままなりません。選ばれた人間だけが使える台詞なのです。
 例えばですが、「お菓子の袋が開けられないよー」とか言ってる人に、「こんなこともあろうかとハサミを用意しておりました」とハサミを出す。そんな状況を思い浮かべてください。一見、用法的に何も間違っていないように見えますが、これには重大な欠陥があるのです。つまり、ハサミなんていう汎用性の高い物、こんなことがあるかと用意しておくべきものではないのです。だって、「お花が採りたいけど折れないよー」という状況でも「紙を2つに分けたいけど手じゃ出来ないよー」という状況でも「長い髪をカットしたいよー」という状況でも、ハサミは使えてしまうのです。こんなことがあるかと、その事件専用に用意する何かとは、とても言えません。
 私が思う、この台詞の使用条件は、以下の2つです。

 1/限定的に困っている状況に陥る
 2/その状況を限定的に解決できるアイテムなり道具なりを用意している

 ただ、この状況も場合によって変更してしまうため、何とも言い難いものがあります。ただ、物品というよりは、どちらかと言えば「限定的に困っている状況」の方が重要です。先ほどの例でいうならば、ハサミは「物を切りたい」という限定的な状況を解決するべき物であるにも関わらず、条件には当てはまりません。ですが例えば、「今使っているハサミが壊れちゃったよー」という条件においては、「こんなこともあろうかとハサミを(ry」というのはアリです。
 もっと穿った例ならば、「宇宙怪獣がやってきて町を荒らしているよー」という状況など。迎撃ミサイルや戦闘ロボットなど、用意する物品が多少違っていても違和感を感じません。限定的に困っている状況が、既にそこで出来上がっているからです。条件1の方が、条件2よりも重要であることは、確定的に明らかなわけです。そこでこそ、裏の裏の手まで考えるという意味で、ようやくこの「こんなこともあろうかと」という台詞が生きてくるわけです。
 汎用性が高いようで、案外汎用性のないこの台詞。あなたも是非とも、使ってみてください。

 (記載日:2010/3/29)


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