皆様は「くらやみまん」なるキャラクターをご存じでしょうか。私の勝手な予想だと、ご存じの方はだいたい3割くらいで、後はご存じないと思います。くらやみまん、変換すると暗闇マン。これ、なんのキャラかと言うと、アンパンマンに出てきたキャラクターなんです。
恐らく、アンパンマンを知らない方はいないでしょう。簡単に説明すると、不思議な世界の平和を守るヒーローで、毎回いたずらをするバイキンマンをやっつける役です。頭はアンパンで出来ていて、毎回ピンチになったらこの頭を取り替えてパワー復帰、バイキンマンをやっつけます。アンパンマンは、原作絵本もさることながら、アニメ版もよく出来ているお話です。わかりやすいし、面白い。この年になってから見てみると、色々と考えさせられることも多いアニメです。
アンパンマンには、食品や生活用品から名前を取った様々なキャラクターが出てきます。食パンマン、カレーパンマンなどのパン系統から、天丼マンやカツ丼マンなどのご飯系統、果てはSLマンややっこだこくん(うろ覚えなので合っているかどうかは不明)などの物質系の仲間達まで、多くの仲間が出てきます。ですが、その中のどのジャンルにも属さない存在が、このくらやみまんです。
私がくらやみまんを初めて見たのは、本当になんでもないときでした。日曜日だったか、昼の3時ごろ、やや遅い昼食を食べていたときのことだったと思います。テレビをつけると、ちょうどアンパンマンのオープニングテーマが入ったので、たまにはアンパンマンを見るのも悪くないと思い見始めたのです。
いつも平和な世界で、またバイキンマンがいたずらをして…と、ここまではよかったのですが、その世界に現れたストレンジャーがくらやみまんでした。シルクハットを被り、漆黒のマントを着て、まるで山のように巨大な体の彼が現れました。彼はいきなり不気味な笑い声をあげて、そのマントの中に、その場にいた一切合切のキャラクター全てを飲み込んだのです。アンパンマンも、バイキンマンも、ジャムおじさんもアンパンマン号もドキンちゃんですらも飲み込まれてしまいました。
くらやみまんのマントの中は、暗黒の世界でした。暗く雲が立ちこめ、雨が降り、木は枯れ街は崩れている。まるで、ブレードランナーかターミネーターのような退廃した世界です。最終的に、ジャムおじさん以下のみんなが力を合わせ、希望の力でパンを焼いて暗闇を追い払うという結末で終わりましたが、私の中には何か後味の悪い物が残りました。
なぜこんな気持ちになったか。要するに、暗くて重いんですよ。アンパンマンという、ある種お約束的で牧歌的な世界が、まるでどんでん返しでもしたかのように一変してしまうんです。マントの中では、バイキンマンとドキンちゃんが出会い、不安に涙を流すシーンもあります。アンパンマンが廃墟を見て絶句するシーンもあったと思います。絶望の世界を目の当たりにした彼らは、それでも希望を失うことはありませんでした。正義のヒーローらしいと言えばヒーローらしいとも思いますが、恐らく私が同じ状況に置かれたら発狂するでしょう。デフォルメされた世界ではありますが、それほどに恐怖をはらんだ内容でした。
アンパンマン公式サイトのくらやみまんの説明には「いちどくらやみにとじこめられてしまうと なかなかにげることができないんだ。」とあります。私は生きていく上で、少なくともそんな恐怖には出会いたくないな、と思うのです。
(記載日:2010/1/17)
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