面白い作品などを読んだり視聴して、最後まで終わった時、なぜだかとても喪失感を感じることがあります。ストーリー物の漫画などだと、だいたいは大まかな流れが起承転結で、一連の流れが出来ています。この、結に入るところにさしかかると、あれだけ面白かった物がもう終わってしまうのかと、寂しい気持ちになるのです。もちろん、だらだらと伸ばして面白くなくなるという事態はよくありませんし、最終目標があるのにそれがどんどん遠くなるような話もどうかと思ってはいます。ですが、ある程度の決まった長さで、面白い物語が展開して終了した時、まだ味わっていたいと思ってしまうのです。
 ゲームなどもそうです。RPGなどは、まず主人公が旅に出て、様々な体験をした後、たいていは世界を苦しめるラスボスを倒して終わります。RPGというジャンルは、敵を倒して経験値を稼ぎ、手に入れた金銭で武具を揃え、更なる舞台への旅を続けるものです。船や飛行機など、フィールドを全て移動できる乗り物を手に入れれば、世界は一気に広がります。そして全ての場所には様々な人が住み、多くのドラマがちりばめられています。それらイベントが全て終わり、最後にラスボスのみが残ったとき、それはもう冒険する場のない最後の世界になるのです。
 そういった意味で、私が深く感銘を受けた作品は、スーパーファミコンでクインテット社が発売した「天地創造」というアクションRPGです。これは、地底の村に住む主人公が、荒廃した地上へあがり、世界を旅して創造していくというストーリーになっております。不毛の荒野に植物を取り戻すところから始まり、鳥類、動物、そして人間を再生させます。人間の文化をゆっくりとなぞり、多くの旅をして、主人公はその形作られた世界を知っていくのです。ネタバレをするのは避けますが、最後には驚愕の展開が待っており、もう一度プレイしたいとコントローラを手に取るまで、そう時間はかかりませんでした。クインテット社のゲームは、他にもプレイしておりますが、どれもこれもすばらしい物語ばかりです。たかだかゲームごときで、と鼻で笑う諸子もおられるかも知れませんが、ゲームはいわば一つの世界なわけですから、そこには現実と変わらない多くがあると思っております。
 私の目標の一つには、この「もう一度読みたい」と思わせることと「まだ終わってほしくない」と思わせることがあります。良質の物語は、限られた長さの中で、人に感銘を与えるだけのものを持っております。これを目標にするのは、この感情が自分の読書歴などに深く関係しているからです。まだもう少しこの世界に浸っていたい。私が物書きを始めたのは、そう思ったのがきっかけですから。
 現在執筆している「おーばー・ざ・ぺがさす」は、泣いても笑っても次回で最後です。これは、私がこの物語を書き始めた時、13話2スパンで書こうと心に決めていたからです。1年という歳月を、ニシキハラリョウマという少年の視点から見たとき、この世界はどう変わったでしょう。ただのギャグノベルではなく、これには「成長」の意も込められております。私は物書きをしてまだ短いですが、この短い期間の中に「成長」出来たのではないかと、手前味噌ながら思っております。次回作品の目処はまだ立ちませんが、もし気が向いたら「おーばー・ざ・ぺがさす」の2シーズンを書いたり、または全く別の物語に手を伸ばしたりとしたいです。
 いよいよ幕引きです。3年の間、おつきあいいただき、ありがとうございました。竜馬の運命は、アリサの恋の行方は。お楽しみに。

 (記載日:2009/6/2)


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