寝間着に使っていたズボンが、ざらっざらの感触で、寝ているときに痛くなりはじめました。ついこの間、もうこれは我慢できんと、近くの電機屋に赴いて毛玉取りマッスィーンを調達してきました。最初は、980円の安物だから試すだけ試してダメだったらあきらめようと思っていたんです。
 が、しかし。これがなかなかどうして、すごい威力を発揮するじゃありませんか。がさがさざらざらしていたズボンが、あっという間にさらさらに。こんなの、買ってきた時以来です。まさかこんな、でかいひげ剃りみたいなマッスィーンがこんなに使えるものだとは。驚きですね。
 皆様ご存じだと思いますが、毛玉は柔らかめの素材が切れて玉になったもので、柔らかい素材の服には大量に発生します。特に、ふかふかウール製の衣服なんかは、1度着て洗濯をしたらばっさばさになりやがります。まさに雨後の竹の子のごとく、毛玉が発生するんです。今まで、これでどれだけ辛酸をなめさせられたことか。神経がとがってて寝にくい時、ようやく眠気がきたと思ったら、上着やズボンと肌が擦れてがさがさがさがさ、目が覚めてしまったこともあります。それも今日限りでおしまいです。
 マッスィーンが使えるということを学んだ私は、さっそく家にある衣類を全て引っ張り出して、毛玉取りを実践することにしました。そうしたら取れる取れる、冬服の毛玉からシーツの毛玉まで、がんがん取れます。衣服が磨り減ってしまっているのではないかと思えるほどです。今までこんなすさまじいものをなぜ試さなかったのかと、後悔しました。まさに人類の英知が生み出した発明品です。

 勢い余りすぎまして、毛玉取り機で戦争が終わる話など、考え始めました。例えば、こう。ある国の王様は、冬になるとなぜかいらいらするようになっていたのですが、とうとうその年にいらいらが募りすぎて、戦争を始めようとしちゃうんです。それも、難癖つけるような、幼稚な理由で。
 大臣以下家来達は、なんで冬になったらいらいらするかを王様に聞くんですが、王様はそれをはねのけて話してくれないんです。このままでは戦争だと、兵士達がおろおろしている中、メイド達が「そういえば…」とか言って、話を始める。王様は服の毛玉が肌に痛くて、いらいらしてしまうのだと。冬服は毛玉がつきやすいのだと。
 そこで、大臣は、王宮技師や錬金術師を集め、服の毛玉が発生しない方法を探るんですが、そんなものは見つからない。困り果てていたときに、誰かが「発生させないんじゃなくて、発生するそばから取り除けばよいのだ」などという案を持ち出します。が、服の毛玉を取るのはかなり時間のかかる作業。どうすればいいのか、などと話しているとき、古い機械の本に、機械式毛玉取りマッスィーンの技術を発見します。大臣以下家来達は、戦争準備に夢中の王様に隠れ、それを製作してします。
 そして翌日。王様が服を着たとたん、そこにはさらさらの肌触りが。いらいらが、まるで春の雪のようにすうっと解け、戦争をやめることを決意。こうして戦争は免れ、平和が…

 某、小さな王様シリーズのようになってしまいました。ええ、まあ。これぐらい良い道具だったということで。皆様も是非一度、お試しください。

 (記載日:2009/4/12)


Textへ戻る